Webビジネス羅針盤
〜コンペ型式がもたらす問題点とは〜

●「沢山の閲覧者に見られ、愛される、ユニパーサルデザイン性に優れたホームページを造る」には、どのような手順を取れば良いのでしょうか?

●最悪のパターンなら既にハッキリしています。それは制作会社がクライアントから依頼を受けてTOPページのカンプを作成。
それらを複数の会社が持ち寄って、プレゼンテーション型式の「コンペ」を行い、そこから最終受注者が決まるという、よくあるお定まりのパターンであった時です。

●「エッ」と思われた方、また「他にどういうやり方があるのか」と、思われた方は多いかと思います。
しかしこのような外観デザインの「見た目」で、最初の方向性を決めてしまってから、具体的なホームページ制作に入っていくような仕事の進め方には大きな問題があります。

●というのは、以降の実制作の様々な場面に於いて、最初のコンペで決まってしまった提案カンプが、その際に提案していない他ページの組立やHTMLコーディング等のホームページ制作の全工程に大きな影響を与えるからです。

〜制作過程のなかでの「振り返り」が大切〜

●結果、全制作過程のなかで一度もページ体裁上の課題を振り返ることなく、また正しいホームページ設計を行うこともなく、そのホームページは完成してしまうことになります。
おそらくユニバーサルデザイン的には、相当問題が残るホームページになってしまうことでしょう。

●このままホームページを公開してしまったら「使いにくい」「知りたい情報がどこにあるかわからない」などの苦情が寄せられる可能性は高くなります。
そうなるとコスト的にも、時間的ロスという部分でも、大変厄介な再修正作業が必要になるかもしれません。

●ホームページ造りの場面で「ひとまず造って後々直していけば良い」という言葉を聞いた方もおられるかと思いますが、そうした考え方は、Web制作会社としての立場で考えると「プロに相応しい言動も見識もない」大変情けない発言だと筆者は考えています。

〜綿密な計画造りがホームページ制作の王道〜

●ではホームページ制作の場合、どうして最初の段階に於いて、単なる「見た目」のみで全てを判断してはいけないのでしょうか。
それには紙に印刷されている媒体物と、パソコンや携帯電話のディスプレイに表示されるホームページとの違いを考えてみて頂ければと思います。

●まずパンフレットやフライヤーなどの印刷物の場合、そこに「一体何が書いてあるのか、また訴えたいことは一体何なのか、それが正しく伝えられているのか」といったメッセージ性の善し悪しが、良否に関わる判断基準になります。

●つまりこれこそが印刷メディアとして気に掛けたい「機能」になるのですが、これは確かに「見た目だけで判断する」ことができます。
というか、「言いたいことを見た目で訴えるため」に、印刷物は造られる訳ですから、この場合、まさに「見た目」と「機能」は一致します。

〜ホームページは印刷物の延長と考えてはいけない〜

●ここで対象を切り替えます。ではホームページと同じ様に、パソコンの画面に表示される格好の「ワープロソフト」や「表計算ソフト」の場合、「見た目」と「機能」の関係は、先の紙媒体と同じでしょうか?

●よく考えてみて下さい。パソコンをちゃんと使える人が、ワープロソフトを選ぶ時は、「ボタンのデザインが格好イイ」などの画面の見た目で、そのソフトウエアの善し悪しを判断することはありません。

●同様にソフトウエア製品の開発メーカーの立場になった場合、ワープロソフトや表計算ソフトを造る際、外注先のプログラム会社が提案してきた画面デザインだけで商品化を決定し、その製品を販売店の陳列棚に並べることは絶対にありません。

●というのはソフトウエア造りの場合、画面デザインよりも、そのソフトウエアを操作してみて「本当に使えるか」「操作上の不具合は無いのか」を慎重に判断しなければならないからです。
つまりソフトウェア製品の本当の「価値」は、使い易さなどの「機能性」にあるのです。これは見た目だけで判断できません。

〜マイホームは設計図ナシでは建てられない〜

●対してホームページは一般的な認識上、パンフレットやフライヤーなどの印刷物の延長線上にあるモノとして受け取られています。しかし実際には、紙の印刷媒体の延長線上にあるモノというより、先のワープロや表計算といったソフトウェアに近いのです。

●造った文書を保存するという目的のために、メニューを幾つもクリックしていかなければならないようなワープロソフトは誰も使いません。同様に閲覧者がボタンを直接操作して中身を見ていくホームページも、煩雑なメニュー操作があるとやっぱり嫌われます。

●このような使い手側がモノの善し悪しを判断する製品の場合、その出来不出来を決定づける最も重要なポイントは「設計」にあります。
しかし設計の良否は数ページのカンプでは判断できません。

●ホームページ制作で、印刷物をチェックする様に、いきなり見た目先行で制作を進めてしまうということは、画用紙に書いた建物の外観だけを頼りに、設計図を一切造らず、住宅ローンを組んでマイホームを建ててしまうことと同じなのです。
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〜私たちの生活・行動環境に不可欠な心配りを〜

●「自分のホームページをできるだけ沢山の方に見てもらいたい」。そうであるなら、必ず押さえておきたいポイントがあります。
そのキーワードは、「ユニバーサルデザイン」です。ちなみにこのユニバーサルデザインという概念を、あなたのホームページに適応させていくには、「ユーザビリティ」と「アクセシビリティ」というふたつの要素をクリアさせていく必要があります。

●このアクセシビリティやユーザビリティという概念は、何もインターネットのホームページだけに限りません。
私たちが街を歩いている時に「道路や床の段差解消や、動く歩道のようなもの」、列車に乗った際、「駅構内で自分が歩いていく先を道案内してくれる看板」、「家電製品の分かり易いボタン表示」など、様々な場所・場面に配慮されています。

●アクセシビリティ、ユーザビリティの双方ともに、「使い易いことを目指す」のは同じなのですが、アクセシビリティは、主に高齢者や障害者等を対象に、「使えない状態を使える状態にする」こと。
それに対してユーザビリティは、ある程度は使える状態になっているものに対して、特定の性別・世代・職業等、あらかじめビジネス上のターゲットにしたい人を対象に「より使い易い」と感じてもらえるかどうかを目指しています。

〜閲覧者に優しいページ造りのための参考サイトとは〜

●ちなみにユーザビリティには、「ある利用者が、ある目的を達成する時の効果、効率、満足感のことを指す」という定義もあって、つまるところ使いにくければ満足感が低くなることは、きっとリアルに実感して頂けるのではないかと思います。

●さてホームページの場合、ユーザビリティが悪化する原因のひとつには、ホームページの閲覧者が見たり、マウスを通して触れたりする部分が、その人の心理、認知、生理、感性などに合致していないケースがあります。
例えば、ホームページ上で一度に表示するべきメニューは、6項目位が一番良いと言われています。これは、人間の記憶力が短期間で覚えられる項目が6〜7個程度であるからです。これを無視して沢山のメニュー項目を一度に表示させると、そのホームページの閲覧者はメニューを選ぶのに時間がかかったり、間違ったりすることになります。

●ユーザビリティに関する参考サイトでは、W3C勧告の他、ウェブページのHTMLファイル・CSS (Cascading Style Sheet) のアクセシビリティを診断するソフトウェアWebInspectorを配布、独自のアクセシビリティ指針を打ち出している富士通のサイト。
オーストラリアの視覚障害者団体が設立したNPOのNILSが開発したツールバーの配布サイト。IBMのアクセシビリティ・センターや、aDesigner(エーデザイナー)配布ページ。HTML文法チェックサイトなども参考になります。その他、三井住友銀行など一般企業もアクセシビリティガイドラインを公開しています。
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〜統一メニューが無いことの不自然さ〜

●今回はホームページ制作者の立場から見て、常識を越えるコンテンツの配置やメニューの置き方をしていることで、来訪する度に何かと驚かされることが多い「地方自体のホームページ」へ行ってみました。初回は、名実ともに日本を代表する都市、東京都のホームページです。

●東京都は、2006年度の名目上の都内総生産で92兆2771億円と、その当時のオーストラリアやオランダ一国レベルのGDPを凌ぐほどの経済規模を誇ります。しかし肝心のホームページは、そんな巨大な経済規模を持つ国際都市として、全く不釣り合いな大きな掲示板のような造りです。

●特に導線設計に於いて、閲覧者が自然に視線を動かせていける設定にはなっていません。ページデザインとしては「Yahoo!Japan」に見られる、縦3分割のいわゆる「3カラム構造」というタイプなのですが、普通ならページ閲覧のよりどころとなるはずのグローバルメニューが、そもそもどこにも見あたらないのです。加えて、各メニュー情報の掲載場所も、あまり熟考したとは思えないような置き方になっています。

〜TOPページの下にカテゴリページを置くべき〜

●例えば、本来であれば東京都のホームページに来訪する閲覧者が、「きっとよく使うのでは?」と思われる「組織から探す」「分野から探す」というメニューは、TOPページを下側までわざわざスクロールしなければ、確認できない左枠最下段のような場所に配置されています。

●しかし一方で、ホームページ担当者がコンテンツ配置の重要性をまったく認識していない訳ではないらくし、今度はTOPページ反対側の右枠上段付近にある「サイトマップ」をクリックすると、「それなりに利用頻度や使い勝手を考えたのではないか?」と思われるような順番で、メニューが並べられています

●それなのにTOPページから「組織から探す〜各局のページ」など、どこかのリンクをクリックしてしまうと、いきなりリンク先がだらだらと並んでいるだけのリンク集のようなページになってしまうのです。こうした下層ページには、先のサイトマップを参考にした縦メニューを是非入れて、回遊性を高める配慮をしていくべきです。

●東京都のホームページの場合、サイト構造的に、次々とクリックしていった先に「総務局」「財務局」など、制作ルールの全く異なる部門ページがぶら下がっている構造であることが一番の問題なのですが、少なくともTOPページとその次に続くページを、ひとつのカテゴリとして再検討して作り直すことで、使い勝手はかなり改善されると思います。

〜多様な立場、目的を持つ来訪者を受け入れるために〜

●一方、同じ東京都ホームページでも、英語版や中国語版などの外国語ページの方は(TOPページ右最上段に切り替えボタンがあります)、掲載されている情報量が少ないからなのか、シッカリ、グローバルメニューが造られており、率直に言ってページ構成としてはこちらの方がよほど分かり易いです。
日本人も外国の方と同じ人間なのですから、ここは是非、同様の造りを追求した統一ページを造って頂きたいところです。筆者も日本語・英語のサイトを造ることはありますが、その際は可能な限り、デザイン統一するようにしています。ユーザーインターフェイスに国境なんてありません。

tokyo_web.jpg

●ちなみにホームページのデザインにあたって、東京都と姉妹都市のローマ市のように特別格好良いものにする必要はありません。けれどもおなじ姉妹都市のニューヨークベルリン程度のインターフェイスは用意するべきでしょう。
特に東京都は、「身近な生活情報」の発信を港区新宿区などの区のページに任せてしまえる立場であるだけに、広域ユーザーの来訪を前提に「検索のし易さ」にこだわったり、「閲覧者が今どこのページを見ているのか」かがシッカリ判る程度のナビゲーション性は絶対確保するべきです。

●そこで、こうした自治体など比較的情報過多になりがちなホームページ設計の場合は、「グリッド理論」という考え方が役立ちます。
このグリッド理論とは、スイスのグラフィックデザイナーのヨゼフ・ミューラー・ブロックマン(|josef muller blockmann)氏が考案したとされるデザインフォーマットに対する考え方です。

〜自由な発想がむしろ不自由なページを造ることに〜

●今サイトのように、個別のコンテンツへ飛ぶボタンを後付で組み込んでいったように見えてしまうページスタイルは、閲覧していて安っぽく、場当たり的なものに感じてしまいがちです。本来複雑なコンテンツ要素かつ膨大なページ数を必要とするホームページの場合、あまりに自由過ぎる発想と環境は、むしろ製作工程でデメリットを呼び込んでしまうこともあるのです。

●グリッド理論の「グリッド」とは、その名通りの「格子」のことで、画面を格子状の下地に分割・整理した上で機能別にレイアウトを整える手法です。このグリッド理論を使うと、利用者に対して視覚的な誘導効果を造り出すことができ、情報の分類や区別、見出しと本文の可読性をよりスムーズにします。
一定のリズムで構成されたデザインは、見ていて安定感があり、読み易く、コンテンツへの理解度を促進させる効果もあります。
 
●このような考え方は参考サイトとして、「960 Grid System」を筆頭に幾つか存在しています。
ちなみに「960 Grid System」は、ページ幅を960px(ピクセル)に固定させるという考え方がベースで、これは960pxという数字が2, 3, 4, 5, 6, 8, 10, 12, 15, 16, 20, 24, 30, 32, 40, 48, 60, 64, 80, 96, 120, 160, 192, 240, 320, 480と、多くの数字で区切ることができること。フレキシブルにグリッドの設計を行えられることから提唱されています。今回、特段960pxにこだわる必要はありませんが、グリッド理論に基づいた考え方はホームページ制作に於いて、クオリティアップを目指すためのひとつの特効薬になってくれるものなのです。
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